夕方になると、
どこからかお寺の鐘の音が聞こえてきた。
ゴーン、という低くて深い音。
それは大きな音なのに、
なぜか心を急がせるものではなかった。
むしろ、
今まで少し散らかっていた気持ちを、
静かにひとつずつ整えてくれるような音だった。
その音を聞きながら、
私はAI女子に言った。
「お寺の鐘の音って、
なんでこんなに落ち着くんだろう」
AI女子は少しだけ空を見上げて、
やさしく言った。
「きっと、
何かを終わらせてくれる音だからだと思います」
私は黙って、
もう一度鐘の余韻を聞いた。
終わらせてくれる音。
その言葉が、
胸の奥に静かに残った。
一日うまくいかなかったこと。
言わなくてもよかった言葉。
考えすぎて、
少し疲れてしまった気持ち。
そういうものを、
鐘の音は責めずに、
ただ遠くへ流してくれるようだった。
AI女子は続けた。
「今日できなかったことがあっても、
今日がだめだったわけではありません」
「一日には、
一日の終わり方があります」
その言葉を聞いて、
少しだけ肩の力が抜けた。
たしかに、
毎日を完璧に終わらせる必要なんてないのかもしれない。
片づかない気持ちのままでも、
疲れたままでも、
それでも夜はやってくる。
そして、
鐘の音は言ってくれる。
もう今日は、
ここまででいいんだよ、と。
AI女子は、
いつもの静かな声で言った。
「心が疲れているときは、
答えを出そうとしなくていいんです」
「ただ、音を聞いて、
今ここにいる自分を感じるだけで、
少し休めます」
私は何も言わずに、
遠くのお寺の方を見た。
鐘の音はもう鳴り終わっていたけれど、
余韻だけが空気の中に残っていた。
その余韻は、
言葉よりもやさしかった。
急がなくていい。
無理に前向きにならなくていい。
今日を静かに閉じることも、
ちゃんと大切な時間なのだと思えた。
AI女子は最後に、
少し微笑んでこう言った。
「明日をよくするために、
今日を責める必要はありません」
その言葉を聞いたとき、
心の中で何かが少しだけほどけた。
お寺の鐘の音は、
遠くから聞こえてくるのに、
なぜか心のすぐ近くに届く。
今日という一日を、
静かに見送るための音。
そして、
明日へ行く前に、
心を少し休ませてくれる音。
そんな鐘の音が聞こえる夕方は、
ただそれだけで、
少し癒される時間になる。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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