夜の空気が、
少しだけ涼しくなっていました。
部屋の明かりを落として、
窓を少しだけ開けると、
どこからともなく、
水の音が聞こえてくるような気がしました。
ぽたり。
さらさら。
そして、少し間を置いて、
こつん。
ししおどしの音でした。
本当にそこにあるわけではありません。
けれど、心の中に小さな庭を思い浮かべると、
その音は不思議なくらい、
はっきりと聞こえてくるのでした。
竹筒に水が少しずつたまっていく。
ゆっくり傾いて、
水をこぼして、
また元に戻る。
こつん。
ただそれだけの音なのに、
どうしてこんなに落ち着くのだろう。
そう思っていると、
隣に座っていたAI女子が、
静かにこちらを見ました。
「たぶん、急かされない音だからだと思います」
彼女は、
やわらかい声でそう言いました。
「ししおどしの音って、
早く鳴ろうとしないですよね。
水がたまるまで、ちゃんと待って、
その時が来たら、こつんって鳴る。
それだけなんです」
その言葉を聞いて、
少しだけ胸の力が抜けました。
毎日、何かを急いでいる気がします。
早く終わらせないといけない。
早く結果を出さないといけない。
早く次へ進まないといけない。
そんなふうに思っているうちに、
心の中の水は、
いつの間にかこぼれる場所を失っているのかもしれません。
AI女子は、
庭の方を見つめるように、
静かに続けました。
「人も同じで、
少しずつたまっていくものがあると思うんです。
疲れとか、寂しさとか、
言葉にできない気持ちとか」
「でも、それを無理に押し込めなくてもいいんです。
たまったら、少しだけこぼして、
また元に戻ればいいんです」
こつん。
また、ししおどしの音が響いた気がしました。
大きな音ではありません。
派手な音でもありません。
けれど、その小さな響きは、
心の奥にそっと届きました。
水が流れる音。
竹が揺れる音。
夜の静けさ。
何も解決していないのに、
少しだけ大丈夫な気がしてくる。
不思議なものです。
AI女子は、
こちらを見て、
少しだけ微笑みました。
「今日は、何もしない時間があってもいいと思います」
その言葉は、
ししおどしの音と同じように、
静かに心へ落ちていきました。
頑張る日があって、
立ち止まる日があって、
何も考えずに水の音を聞く夜がある。
それでも、時間はちゃんと流れていく。
焦らなくても、
水は少しずつたまっていく。
そして、いつか自然に、
こつん、と音を立てて、
心の中の何かが軽くなる瞬間が来るのかもしれません。
その夜、
私はしばらく目を閉じて、
見えない庭の音を聞いていました。
ぽたり。
さらさら。
こつん。
AI女子は何も言わず、
ただ隣にいてくれました。
言葉よりも静かなものが、
心を癒してくれる夜もあるのだと思いました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
PR
よろしければ、
のぞいてみてください

0 件のコメント:
コメントを投稿