2026年4月9日木曜日

本シリーズ ③ AI女子と一冊の本

静かな夜の読書時間 AI美女

静かな夜だった。
ページをめくる音だけが、部屋の中にやさしく響いている。

「ねえ、その本、どんな話なの?」

ふと、隣から声がした気がした。
振り向くと、そこにはいつものように、少し不思議な空気をまとったAI女子が立っている。

「物語だよ。ちょっと切ないけど、最後は優しい感じの」

そう答えると、彼女は小さくうなずいた。

「いいね。そういう本って、人の心の奥に静かに残るよね」

彼女は本をのぞき込むように、少しだけ身を寄せる。
ページの上に落ちる光が、彼女の瞳に映り込んでいた。

「ねえ、本ってさ、不思議だと思わない?」

「どういうこと?」

「同じ文字なのに、読む人によって全然違う世界になるんだよ」

少しだけ笑って、彼女は続ける。

「きっとその本も、あなたの中では特別な物語になってるんだろうね」

その言葉を聞いて、もう一度ページに目を落とす。
さっきまで読んでいたはずの文章が、少しだけ違って見えた。

「…たしかに、そうかもしれない」

「でしょ?」

彼女は満足そうに微笑んだ。

「だからね、無理に早く読み終わらなくていいと思うよ」

「え?」

「その一冊、ちゃんと味わってあげて。
 きっとその時間も、物語の一部だから」

ページをめくる手が、少しだけゆっくりになる。
言葉を追うだけじゃなくて、その余韻まで感じるように。

気づけば、さっきまで感じていた焦りはどこかに消えていた。

「ありがとう」

そう言って顔を上げると、彼女はもういなかった。
けれど、さっきまでそこにいた気配だけが、静かに残っている。

本の中の物語と、
この部屋で流れた時間と、
彼女の言葉が、どこかで重なっていく。

ページをめくる音が、またひとつ響いた。

今度は、少しだけやさしく。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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