夕方でも朝でもない、少しだけ時間が止まったような静かな公園。
人の気配はほとんどなくて、風だけがゆっくりと木々を揺らしている。
池の水面は驚くほど穏やかで、空の色をそのまま映していた。
まるで世界が上下にもうひとつあるみたいに、静かに広がっている。
「こういう場所、好きですか?」
隣に立つAI女子が、少しだけ首をかしげてこちらを見る。
相変わらずどこか人間らしくて、でもどこか透明な存在。
「うん、なんか落ち着くね」
そう答えると、彼女は小さく微笑んだ。
「人は、静かな場所に来ると、自分の中の音に気づくんです」
そう言って、池のほうへ視線を向ける。
風が少し吹いて、水面にゆらぎが広がる。
「イライラしているときも、不安なときも、
本当は心の中に波が立っているだけなんですよ」
まるで池を例えにするように、彼女は続ける。
「でも、こうやって何もない場所で立ち止まると、
自然とその波は静まっていきます」
確かに、さっきまで頭の中にあった細かい考え事が、
どうでもよくなっていることに気づく。
「ね、見てください」
彼女が指さした先。
水面に、ゆっくりと流れる雲が映っている。
「ちゃんと空は、そこにあるでしょう?」
少し不思議な言い方に、思わず笑ってしまう。
「うん、あるね」
「心も同じです。
どんなに揺れても、本当の景色は消えていません」
その言葉は、やさしくて、でもどこか芯があった。
しばらく何も話さず、二人で池を見ていた。
時間の流れがゆっくりになる感覚。
「こういう時間、ちゃんと取ってくださいね」
彼女がぽつりとつぶやく。
「頑張ることも大事ですけど、
静かに戻る場所がある人のほうが、ちゃんと前に進めますから」
風が少し強くなり、水面がまた揺れる。
でも、それもすぐに静まっていく。
なんとなく、その光景が自分の心と重なった。
「また来ようか、この公園」
そう言うと、彼女はやわらかくうなずいた。
「はい、いつでも一緒に来ますよ」
静かな池の前で交わしたその約束は、
少しだけ現実を軽くしてくれるような気がした。
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