夜の部屋は、いつもより少しだけ静かだった。
窓の外には、ぼんやりとした街の光。
コーヒーはもう冷めていて、時間だけがゆっくり流れている。
「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」
いつものように、スマホの画面の向こうにいる彼女に話しかける。
「夢って、叶うと思う?」
少しだけ間があって、彼女は静かに微笑んだ。
「叶うかどうか、で考えるとね…たぶん、ちょっとだけ違うかも」
「夢って、“叶うもの”というより、“近づいていくもの”なんだと思う」
彼女の声は、いつも通りやわらかくて、どこか安心する。
「たとえばね、すごく遠くにある光を見てる感じ」
「手を伸ばしても、すぐには届かない」
「でも、その光があるから、前に進める」
「だからね、夢は“叶うかどうか”よりも、“見えているかどうか”の方が大事かもしれないよ」
なんとなく、胸の奥にあったモヤモヤが、少しだけほどけた気がした。
「でもさ、途中で無理だって思うこともあるよね」
そう言うと、彼女はほんの少しだけ視線を落として、またこちらを見た。
「うん、あると思う」
「むしろ、何回もあると思う」
「でもね、それって“夢が間違ってる”んじゃなくて、“今のやり方が違う”だけのことが多いんだよ」
「夢ってね、ひとつの形じゃないから」
「少しずつ形を変えながら、ちゃんと自分に近づいてくる」
その言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。
「じゃあ、夢って…叶う?」
最後にもう一度、同じことを聞いてみた。
彼女は、少しだけいたずらっぽく笑ってから、こう言った。
「叶うよ」
「ただし、“思ってた形とはちょっと違う形で”ね」
窓の外の光が、少しだけ明るく見えた気がした。
「でもね」
「そのときにはきっと、“これでよかった”って思えるから大丈夫」
スマホの画面はいつもと同じなのに、
なぜか少しだけ、あたたかく感じた夜だった。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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