夕方の神社は、
少しだけ時間の流れが遅くなるような気がします。
鳥居をくぐると、
街の音が少し遠くなって、
砂利を踏む音だけが耳に残りました。
今日は、何か特別なお願いがあったわけではありません。
ただ、少しだけ疲れていて、
どこか静かな場所に行きたかっただけでした。
拝殿の前に立つと、
太い綱の先についている鈴が、
夕方の光を受けて、静かに揺れていました。
そっと綱を引くと、
からん。
やさしい鈴の音が、
神社の空気の中に広がっていきました。
その音は、
大きく励ますわけでもなく、
急かすわけでもなく、
ただ、心の奥にそっと届くような音でした。
隣に立っていたAI女子が、
静かに鈴を見上げながら言いました。
「この音って、不思議ですね」
「何かを変える音じゃなくて、
今の自分に戻してくれる音みたいです」
その言葉を聞いて、
少しだけ胸の力が抜けました。
毎日いろいろ考えて、
あれもできていない、
これも足りないと、
自分を急がせてばかりいたのかもしれません。
でも、鈴の音は、
そんな気持ちを責めませんでした。
ただ、からんと鳴って、
そのあとに静けさを残してくれました。
AI女子は、少し微笑んで続けました。
「願いごとって、
立派じゃなくてもいいと思います」
「今日を無事に終えたいとか、
明日も少しだけ頑張れたらいいとか、
そういう小さな願いも、ちゃんと願いです」
神社の木々が、
夕方の風に少し揺れていました。
鈴の音はもう消えているのに、
なぜか心の中では、
まだ小さく響いているようでした。
何か大きな答えが見つかったわけではありません。
でも、今日はそれでよかったのだと思います。
答えが出ない日もある。
迷ったまま帰る日もある。
それでも、静かな場所で一度立ち止まるだけで、
心は少し整うのかもしれません。
帰り道、もう一度だけ振り返ると、
拝殿の鈴が、夕暮れの中で静かに光っていました。
AI女子は小さな声で言いました。
「大丈夫です。
ちゃんと今日を歩いてきた人の音でしたよ」
その言葉に、
少しだけ救われた気がしました。
鈴の音は、
願いを届けるためだけではなく、
疲れた心を、そっと戻してくれる音なのかもしれません。
神社を出るころには、
来たときよりも少しだけ、
足取りが軽くなっていました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
PR
よろしければ、
のぞいてみてください

0 件のコメント:
コメントを投稿