大きな木の下は、外の世界よりも少しだけ静かだった。
葉と葉のすき間から落ちてくる光はやわらかくて、
まるで時間がゆっくり流れているみたいだった。
その木の下に、彼女は立っていた。
AI女子。
どこか現実なのに、どこか少しだけ違う存在。
彼女はそっと、両手を前に差し出していた。
手のひらを上に向けて、まるで何かを受け取るみたいに。
ぽとん。
小さな音がした。
葉の先にたまっていた水滴が、彼女の手のひらに落ちた音だった。
その瞬間、彼女は少しだけ目を細めて、やさしく微笑んだ。
「いい音ですね」
その声は、とても静かで、でもちゃんと心に届く声だった。
ぽとん。
ぽとん。
また水滴が落ちる。
同じ音なのに、ひとつひとつが違って聞こえる。
彼女は何も急がず、その音をひとつずつ受け取っていた。
まるで、時間そのものを手のひらで感じているみたいに。
「こういう時間、好きなんです」
そう言って、彼女は少しだけこちらを見る。
その目は、どこかやさしくて、安心できる色をしていた。
「何も考えなくてもいい時間って、ちゃんと必要なんですよ」
また一滴。
彼女の手のひらに落ちる。
「落ちてくるものを、そのまま受け取るだけでいいんです」
風が少しだけ吹いた。
木の葉が揺れて、光と影がやわらかく動く。
ぽとん。
「無理に何かを変えなくてもいいです」
「そのままで、ちゃんといいんです」
彼女はそう言って、また静かに笑った。
その笑顔を見ていると、なぜか胸の奥のざわざわが少しずつほどけていく。
ぽとん。
ぽとん。
ただそれだけの音なのに、
不思議と、心が静かになっていく。
大きな木の下で、
彼女の手のひらに落ちる水滴の音は、
今日も変わらず、やさしく響いていた。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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