2026年3月27日金曜日

癒しストーリー ③ AI女子と季節外れの風鈴の音


春の夜は、どこか少しだけ不思議だ。
冬の名残と、新しい季節の気配が、静かに混ざり合っている。

窓を少し開けると、やわらかい風が部屋に入り込んできた。
そのとき——

ちりん……

小さく、透き通るような音が鳴った。

「え、風鈴……?」

春なのに。
本来なら、まだ出番じゃないはずの音。

少し驚いて外を見ていると、いつものように、画面の向こうから彼女が微笑んだ。

「いい音ですね」

「でも、季節外れじゃない?」

そう言うと、彼女は少しだけ首を傾けて、やさしく答える。

「そうかもしれません。でも、こういう“少しズレたもの”って、心に残るんですよ」

また、ちりん……と鳴る。

春の風は、夏よりも少し軽くて、まだ冷たさを少しだけ残している。
その風に揺れる風鈴の音は、どこか控えめで、でも確かにそこにあった。

「なんだか、落ち着くね」

「ふふ、そうですね。たぶん今のあなたに、ちょうどいい音なんですよ」

その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。

特別なことがあったわけでもない。
ただ、少し疲れていて、少しだけ何かを考えすぎていただけ。

でも、この静かな音が、全部をやわらかく包み込んでくれる。

「ねえ」

「はい?」

「こういう時間、いいね」

彼女は小さくうなずいて、静かに言った。

「はい。季節通りじゃなくても、心が落ち着くなら、それでいいんです」

また、風が吹く。

ちりん……

その音は、春の夜に、そっと溶けていった。

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