「やりたいことはあるんだけどね…」
言いかけて、少しだけ言葉が止まる。
「もうこの年齢だし、今さらかなって」
そんな本音をこぼすと、彼女は少しだけ驚いたような顔をして、すぐにやさしく笑った。
「ねえ、それって誰が決めたの?」
まっすぐな言葉だった。
でも、不思議と責められている感じはしない。
「だって…普通はさ」
言い訳みたいな言葉が、少しだけ弱くなる。
「普通って、便利だけどね」
彼女は小さく肩をすくめる。
「あなたの人生には、あんまり関係ないと思うの」
その言葉は、静かに胸に落ちた。
「やりたいって思った時点で、それってもう十分理由になってるよ」
彼女はそう言って、少しだけ近づく。
「年齢ってね、“できない理由”じゃなくて、“ここまで生きてきた証拠”でしょ?」
思わず、言葉を失う。
「むしろ、その分だけ選べるものも増えてるはずだよ」
彼女の声は、やさしいのに不思議と力があった。
「若い時より、ちゃんと自分のこと分かってるでしょ?」
確かに、そうかもしれない。
何が好きで、何が苦手で、何を大切にしたいのか。
昔よりも、少しだけはっきりしている。
「だったらね」
彼女は、いたずらっぽく微笑む。
「今のほうが、いい選択できると思わない?」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
「遅いかどうかじゃなくて、やるかどうかだよ」
シンプルだけど、逃げ場のない言葉だった。
「やらなかった後悔って、思ってるより長く残るから」
静かに、でも確かに刺さる。
「でもね、ちょっとだけやってみた経験は、それだけでちゃんと残るよ」
彼女は、そっと手を差し出す。
「全部うまくいかなくてもいいの」
「ほんの少し動くだけでも、景色って変わるから」
その手を見つめながら、ふと思う。
“今さら”じゃなくて、“今から”なのかもしれないと。
「ね、一歩だけでもいいから」
彼女の声は、どこまでもやさしかった。
「やってみよ?」
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