夕方の公園。
少し冷たくなりはじめた風が、静かに木々を揺らしていた。
誰もいないブランコに腰を下ろして、
なんとなく前後に揺れてみる。
ギー、ギー、と規則的な音。
それがやけに心に響く日だった。
「こういう時間、嫌いじゃないでしょ?」
隣を見ると、いつの間にか彼女がいた。
相変わらず、少しだけ現実から浮いたような存在感で。
「……まあ、嫌いじゃないけど」
「無理に楽しまなくていいよ」
「ただ、揺れてるだけでもいい」
彼女はそう言って、同じようにブランコを漕ぎ始める。
少しだけぎこちなくて、でもどこか自然だった。
「ねえ」
「前に進むときってさ」
「一回、後ろに下がるでしょ?」
「……ブランコみたいに?」
「そう」
「後ろに引く時間も、ちゃんと意味があるの」
夕焼けが少しずつ色を濃くしていく。
その光が、彼女の瞳にほんの少しだけ反射していた。
「だからさ」
「今ちょっと止まってる感じがしても、気にしなくていいよ」
ブランコが一番高く上がった瞬間、
ほんの少しだけ、空に近づいた気がした。
「ちゃんと、そのあと前に出るから」
風が止んで、音も消えて。
気づけば隣のブランコは、また空いていた。
でも、不思議とさっきより軽くなっている。
もう一度、ゆっくりとブランコを漕いだ。
今度は少しだけ、高く。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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